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会社の収益は売上げではありません。
もちろん売上げがなければ利益もないのですが、一般的な小売業は売上げの半分以上は原価なので仕入れた時点で売上げの半分は支払いが確定しています。
また「固定費」といって毎月なにもしなくても発生する経費があり、こちらは仕入れをしなくても支払いが確定しています。
主な固定費
・人件費
・家賃
・水道光熱費
・保険料
他にも沢山あり業種によって多少入れ替わりますが、見ての通りなにもしなくても支払いは発生します。
仮にこの「固定費」が売上げの半分を占めていたらその時点でその月(年)は赤字です。会社には「変動費」という別の経費もあるので、この会社は火の車です。
私が言いたいのは収益の「益」は利益の「益」であって、売上ではないということです。いくら売上げがたくさんあっても利益率が低くければ収益は発生しません。
そんなの当たり前だろ?
と思うかもしれませんが、本来は売上げより重要なはずの「利益」が会社にいくら必要なのか分からないスタッフさんが多いのです。場合によっては社長や幹部も分からない会社もあります。
利益を残すための計算式とは?
会社の利益率というのはそんな簡単に上がりもしなければ下がりもしないので、おのずと必要な売上げは計算できるのですが、それはあくまでも利益率を分かったうえでの話になります。
会社が欲しい利益=100万円
固定費+変動費=300万円
利益率=20%
このような会社があるとしたら、必要な利益額はいくらでしょう?
会社が欲しい(残したい)利益と、必要な経費を足すと400万円になります。では利益率が20%なので売上げにするといくら必要でしょうか?
下記の計算式になるので売上で2,000万円になります。
400万÷0.2=2,000万円
では利益率が40%では?
400万÷0.4=1,000万円
利益率が2倍なので売上げは半分でも同じ利益が稼げます。現実では20%の利益率が40%に跳ね上がるということはそうそうありませんが、目標とする「利益率」は必要です。
利益率を上げる方法とは?
利益率を上げるには2つの方法があります。逆に言ったら2つしかありません。さらに言うと今の時代に値下げの交渉に応じる企業は少ないので、実質1つに絞られます。
利益率を上げる方法
・売価を上げる
・原価を下げる
売価を上げる
売価を上げるには大きく分けて3つの方法があります。
1、既存の商品を値上げする
2、これから導入する商品の利益率を高くする
3、オリジナル商品を開発して利益率を高くする
1、既存の商品を値上げする
既存の商品の中でも売れ筋商品を値上げする際は十分な注意が必要です。ライバル店の価格を調査して目立つ商品は逆に値下げするくらいの気持ちでいましょう。(最初のうちは集客が落ちるのは極力避けましょう)
ただし目的はあくまでも値上げです。必要以上に値下げしている商品を見つけて値上げしましょう。
2、これから導入する商品の利益率を高くする
既存品の値上げよりこちらの方がやりやすいですね!ポイントは商品の価値をしっかりと伝えることです。できれば他店では販売していない「差別化商品」が最適です。
これまでだったら800円の値付けをしていた商品を1,000円にして、POPなどで「これだけ素晴らしい商品だから1,500円はしてもおかしくない」というアピールをするのです。
ここで大事なのは「1,000円でも安い」と思ってもらうことです。高く販売していると引け目を感じる必要はありません。その代わり自信をもって販売できるものを仕入れてください。
3、オリジナル商品を開発して利益率を高くする
少しハードルは上がりますが、ぜひ挑戦してほしいのが「オリジナル商品」です。最初は「ラベルを変えるだけ」でもいいので、他店にない商品を導入して自社のブランドを育てることが重要です。
いずれはラベルだけではなく、中身やデザインを完全オリジナルにして、より自社ブランドの世界観をお客様にアピールしましょう。
原価を下げる
利益率を上げるには原価を下げるという方法もありますが、基本的には数を増やすことが条件になりますのであまり得策ではありません。
仕入先と良好な関係を築くためにも、無理な値下げ交渉はあまりしない方が良いかもしれません。
ただし、ここぞという時はしっかり行いましょう。
客層を変える覚悟
1~3までそれぞれに段階を踏む必要があるかも知れませんが、お客さまは敏感なので「この店高くなったなぁ」と感じる人が出てきて離れてしまう可能性もあります。
このようなお客様を食い止める努力も必要なのですが、並行して新しい客層を取り入れることも重要です。
値上げをする=客層を変える
この位の覚悟は必要です。
値上げをするということは、必要以上に値下げをしていた商品を「適正な値段まで値上げする」というケースもあれば、これまでの商品より「グレードを上げて売価の基準を上げる」という値上げもあります。
また、これまでは「安い価格」に魅力を感じてご来店してくださっていたお客さまは離れていく確率は高いですよね?
でもスタッフさんのあいさつや接客が好きでお店のファンになっているお客さまは離れにくいです。「接客」「清潔感」「ラッピング技術」などの価格以外の差別化も重要です。
立地によって戦略も変わります
価格や商品選定の戦略は立地によるところが大きいので、いくら利益率を上げたいからといって必ずしも「値上げをした方がいい」と一概には言えません。
また、これまで自社でとっていた戦略がゴリゴリのディスカウントでしたら値上げは死活問題です。一気にお客様が離れたら商売自体が続かないので、時間をかけて実行するなど慎重に行う必要があります。
焦らずに1年後、3年後、5年後の未来を描きながらじっくりと長いスパンで考えて手を打つようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょう?
値上げと言っても方法は様々です。まずは自社に合ったやり方を見極めて段階を踏みながら実施することをおすすめします。現場ではクレームが発生する可能性もあるので、スタッフさんのケアも必要かもしれません。
重要なのは「なんのための値上げなのか?」ということを全員で共有することです。
みんなのお給料をアップしたいから、働く環境を良くしたいから、お客さまに快適な空間でお買い物をしてほしいから・・・理由は様々ですが、会社が生き残るためも利益は必要です。
値上げは会社を変える大きな施策です。失敗は死活問題にもなりかねませんので、スタッフさんとしっかりとコミュニケーションをとって、お客様の声に耳を傾けながら慎重に行いましょう!